小説「坂の上の雲」の中で、次のような会話が挿入されていました。
「日本の光は、武士根性である。おなじ東アジア人でもシナの長所は商人根性である。これもすぐれている。この両民族が協同し、その長所が生かされれば、はじめて東アジアに平和がくるし、人類の幸福が保障される」
今から100年ほど前に小村寿太郎が語ったという設定(事実かどうかは歴史に詳しくないのでよくわかりません・・・)になっているのですが、おもしろいなあと感じたのは「シナ(中国)の長所は商人根性」とあったからです。
私たちの世代が今までに、「中国の長所」を「商人根性」であると見出すことはほとんどなかったと思います。その代わり(中国人は「家」を大切にする文化があるということをよく耳にしてきましたが)、「商人根性」の優れた「家」が「華僑」と呼ばれ、世界的に影響力を持っていたのかもしれません。ただし、それはあくまで「家」単位であって、「国家」単位ではなかったと思います。
21世紀の現在、中国の「商人根性」の優位性に関心が集まり、またその影響力が世界的に高まっていくことを実感します。そのような現在において、日本は「武士根性」の優位性がまだあるのでしょうか、また、あるとしたらそれをどのように活かしていくべきなのでしょうか。
私自身、「武士根性があるのか?」と聞かれたら、即答で「ないでしょう」と言わざるを得ないのですが、「そもそも、『武士根性』って何ですか?」と質問したくなります。
21世紀における「武士根性」とは、一体どのようなものなのでしょうか。
もちろん、「人を斬る」ことでも「自らを斬る」ことでもないと思います。21世紀における「武士根性」とは、「自らの命を天に預け(天命)、自らの仕事(天職)に、命を懸ける(懸命)」ということでしょうか。
「武士」がいた時代でも、「武士根性」は「武士」だけのものではなかったと思います。近江商人の「三方よし」なども、まさに「武士の家訓」として出てきそうな言葉です。改めて、日本の「武士根性」を見つめ直していけば、これからの日本の歩むべき道が開けてきそうな気がしてきます。