ミドルエイジ・クライシス

深夜、なかなか寝付けなくて、何気なくテレビをつけたときに映し出された番組に見入ってしまいました。

「現在の日本は、30代を中心に、非常に厳しい雇用環境の社会となってきている」という内容の番組でした。そこには、明日が見えない不安と向き合いながら、どのように生きていけばいいのかわからない人の意見が数多く紹介されていました。「全く先が見えません」「仕事量が膨大で、うつ病になってしまいました」など、本当に深刻な意見が多かったようです。

なぜ、このような殺伐とした社会になってきたのか、すっかり目が覚めてしまった私も、自分なりにいろいろと考えてみました。今、私たちは、無言の圧力で「○○マシーン」になることを求められているのではないだろうか、という気がします。


「『仕事をする○○マシーン』。さて、あなたは、○○にどのような言葉が入りますか?」

このような質問を、社会から投げかけられているような気がします。「○○」には、もちろんそれぞれの職業や職種、仕事内容が入ります。今の社会は、「○○人間」ではなく、あくまで「○○マシーン」になることを求めています。なぜ、私たちは、「マシーン」になることを求められているのでしょうか。


最近、たまたまテレビをザッピングしていると、日本社会のリーダー的存在の人が「論理思考が大切である」といった主旨のことを話されていました。それも一人だけではなく、違う番組で三人が三人とも「論理思考の重要性」を説いていらっしゃいました。

確かに、「論理思考」は、仕事をする上で非常に大切なスキルだと思います。自分自身、「論理思考」が不十分であることを認めざるを得ませんので、謙虚に受け止めたいと思います。ただし、「論理思考」は、あくまで「スキル」でしかありません。つまり、現在の日本のリーダー的存在の人が、「スキルの重要性」を力説しているわけです。

「スキル」は「手段」であって、人間らしい「目的」を達成するために利用するものです。だから、本当は「スキル」よりも、「目的」こそが重要なのではないでしょうか。


ただ、非常にややこしいのは、「論理思考が大切」とおっしゃっていたリーダー的存在の人は、実はそれぞれが「目的」を隠し持っているのではないか、ということです。「どのような社会にしたいか」「どのように生きたいか」という「目的」を隠し持っていながら、表面では「論理思考が大切」だと力説するために、そういったリーダーに引っ張られていく我々の世代は、本当に大切な「隠された部分」が闇に葬られ、「論理思考」だけが重視されるようになってしまっているのではないでしょうか。

つまり、「スキル」を「手段」ではなく「目的」に履き違えた人たちが、いろいろな組織でリーダー的存在になりつつある社会、になってきているのではないかと思います。


そのことの何が問題か。それは、「スキル」さえ身に付ければ、「希望」や「幸福」でさえ獲得することができる、という錯覚が浸透してしまうことにあるのではないでしょうか。「どのように生きるか」「何のために生きるか」といった、本当に大切な「目的」を曖昧にしたままであっても、「スキル」さえ身に付けて地位や財産を得ることができれば、「目的は後からついてくる」という錯覚が、今の日本に蔓延しているのではないかと思います。そして、周りの人を「マシーン」のようにみなして「利益誘導」する人が、多くの組織でリーダー的存在になることで、社会の殺伐さがより深刻化しているのではないでしょうか。複雑で曖昧だけど、今まで大切にしてきた価値観、例えば「人間性」や「志」といったものは、知らず知らず「軽視」する社会になってきているのではないでしょうか。

本当は、全く逆なのではないでしょうか。「目的さえ持っていれば、スキルは後からついてくる」と信じたいと思います。その深夜の番組では、次のような意見もありました。「私たちは、偏差値重視の価値観を教えられてきました」


私自身、反省しなければなりません。偏差値三流の高校から大学に進学したときは、何か自分自身の「格」が上がったような気がしました。でも、現在を冷静に受け止めてみると、「生きる目的」と真剣に向き合ってこなかったばかりに、市場価値の高いスキルを身に付けているわけでもない、人望があるわけでもない、といった環境に身を潜めてもがいています。

そんな私ですので、一時期、精神的に不安定な時期もあったと思います。でも、最近は前向きに生きています。それは、「自分自身の生きる目的」をしっかりと考えさせていただける人たちに出会うことができましたし、また、そのような本と出会うこともできたからです。


自分自身、すでにアラフォーですが、「偏差値重視の価値観」から脱却し、「生きる目的重視の価値観」に方向転換することで、前向きに、悔いなく、ワクワクしながら残りの時間を生きたいと思います。