「このままいけば」

日本国家の財政状態などにより、「日本の将来は厳しい」といった意見をよく耳にします。しかしながら、この予測には、大きな「前提条件」が含まれています。それは、「このままいけば」という前提条件です。

例えば、「このままいけば」日本の人口はどんどん減っていく、「このままいけば」日本国家の財政は破綻してしまう。「このままいけば」…


「人口変動は、その予測の精度が高い」と聞いたことがあります。予測する内容によってその精度は異なるのでしょうが、私たち個人の生活においては、「そう簡単には『このままいけば』のとおりにはならない」という実感があるように思います。「人間万事塞翁が馬」という言葉があるとおり、「人生、いいこともあれば、わるいこともある」ということを、自然と実感しているような気がします。


「良い方向性の感情よりも、悪い方向性の感情のほうが、その伝染力は強い」と聞いたことがあります。それは、「絶対にこのままいかない」という自然の摂理が、私たちに組み込まれているからのような気がします。「老い」や「死」という定めによって、「このままの状態が続くわけではない」ということを、意識的にも無意識的にも思い知らされています。そして、誰一人として、「老い」や「死」という自然の摂理を避けて通ることはできません。だからこそ、「深い共感」を持つことができるのでしょうか。


「深い悲しみがなければ、深い喜びもない」という言葉を聞いたことがあります。「老い」や「死」がもしも「深い悲しみ」であるとするならば、私も「深い喜び」を得る権利を持っていることになります。それが何なのか、今はうまく言えませんが、「託す喜び」のようなものなのでしょうか。


「深い悲しみ」を内蔵している自分だからこそ、「深い喜び」を見出していくべく、一日一日を大切にしていきたいと思います。