「顧客第一主義」の反省

経営に関する本を読んでいると、「繁栄し続ける企業は、どこまでも顧客の方に目を向けている」だとか、「事業のヒントは、常に潜在顧客の中にある」といった言葉をよく見かけます。つまり、企業は「顧客第一主義」を実行し続けることが必要不可欠だということのようです。


私は今まで、この「顧客第一主義」というものを表面的な薄っぺらいところでしか捉えていなかったと反省します。


先日の大地震津波に飲み込まれた旅館の一つを、テレビ番組で紹介していました。この旅館では、日頃から津波に対する避難訓練を地道に行なっていたそうです。2011年3月11日、旅館が大津波に飲み込まれてしまった日、日頃の訓練の成果は発揮され、お客様を安全な場所に誘導し、お客様全員の身の安全を確保することができました。そして、最後まで旅館に残った社長が行方不明となってしまいました。


お客様全員を無事に避難させた支配人は、次のように語っていました。「私たち従業員は、住む家が流され、家族が流されている者がほとんどです。でも、お客様が全員無事でいらっしゃったことが一番よかったです」


私の考えていた「顧客第一主義」は、あまりにも上滑りのした、軽々しいものであったことを思い知らされます。でも、正直なところ、この社長や支配人のような「大きな器」に私自身がいつかなれるかというと、これはかなり難しいと言わざるを得ません。自分の住む家や家族が流されてもなお、「お客様が全員無事で一番よかったです」と言い切る自信はありません。


本当に世の中には、「すごい人」がいるのだなあと気づかされます。私自身が死ぬまでにどこまで到達できるかはわかりませんが、少なくとも謙虚に、前向きに歩み続けていきたいです。