「海に恨みはない」

3月11日の津波によって甚大な被害を受けた漁業関係者の間では、「海に恨みはない」と語っている人が多いという記事を見つけました。さらには、「被害を受けた直後は、『こんな場所にはもう戻りたくない』と思っていたけど、やっぱり海の見える場所に戻りたい」と言っている人が増えていることもわかってきたということです。


そのような人たちの意見を受けて、政府はどのような対応をしていくべきなのでしょうか。国民の安全を第一に考えつつも、地元住民の意見も尊重すべきだし、改めて政策を決断することの難しさを実感します。


以前、ある人から「当事者意識」の重要性を教えていただいたことがありました。例えば、「もし自分が総理だったら、今回の津波原発の問題を受けて、どのように対処していくだろうか」といったように考えるということでしょうか。あるいは、自分が被害者だったら、政府に何を求めるだろうか、と考えることなのでしょう。そのような「当事者意識」を持ってみると、改めて「決断すること」の難しさを考えさせられます。どのような決断をしても、必ず賛成する人と反対する人が出てくるでしょうし、賛成する人の中でも100%賛成という人はほとんどいないかもしれません。でも、「決断すべき人」は、組織全体にとってベストだという選択肢を自ら決断し、実行していかなければなりません。


リーダーが決断し、実行していくということは、本来、足がすくんで身動きがとれなくなるくらいの重みがあるのかもしれません。だからこそ、普段から「当事者意識」を持つことが大切なのかもしれません。


さて、「海に恨みはない」という言葉ですが、とても重みがあるように思います。想像を絶する被害を受けたにもかかわらず、やっぱり海の見える場所に住みたいという気持ちは、実際に体験された人でないと深く理解することはできないと思います。それでも、「決断すべき人」は、例えば「海の見える場所」を「自分のふるさと」などに置き換え、その人たちの気持ちを理解しようとする姿勢が大切なのではないでしょうか。


もちろん、そこで留まっていては何も生まれませんから、私自身、「当事者意識」を持って日々のささやかな決断を実行していきたいと思います。