後ろ向きの意思決定をする際は、前向きの意思決定をする際と同じか、それ以上に慎重な判断が求められるのではないでしょうか。
株式の売却について、考えてみたいと思います。仮に100万円で購入した株式が、その後株価が大幅に上昇し、500万円で売却するのか、それとも600万円まで待って売却しようとするのかは、その差が100万円もあることから、自然と真剣に検討することになろうかと思います。
一方、100万円で購入した株式が、その後株価が大幅に下落し、5万円で売却するのか、それとも6万円まで待って売却しようとするのかは、その差が1万円であるために、それほど真剣に検討することなく、感情的に売却することが多くなってしまうのではないかと思います。
もちろん、株式の売却における利益や損失は、その額面だけでなく、精神的な昂揚感や絶望感もついてまわるかと思いますが、それが事業や経営の「意思決定」においては、もっと複雑で大きな影響力が後々までもたらされるような気がします。
新規事業の構築など、前向きな場面においては、慎重に慎重を重ね、いろいろなことを検討した上で「意思決定」を行うことが大切だと言われています(自分自身、そのことも十分に反省する必要があります)。一方で、すでに行っている事業を撤退もしくは縮小する場合は、損失の範囲がある程度予測できますので、ついつい慎重さに欠けた「意思決定」をしてしまう落とし穴があるような気がします。
実際、新規事業を行う際には、大きな影響力、大きな数字をイメージして検討を重ねていく傾向にあり、事業撤退等においては、小さな影響力、小さな数字をイメージして検討する傾向にあるのではないでしょうか。
確かに、後ろ向きの「意思決定」をする場合、何を採用しても、それほど違いがないように思えて、「まあ、多少のことはいいか」となってしまいそうですし、実際に「多少のこと」で済んでしまうことも多々あるかと思います。でも、その中に、「多少のこと」では済まされない「意思決定」も含まれているのではないかと思います。
自分自身の反省として、「後ろ向き」の意思決定を行わなければいけない場合、それはあまり気持ちのいいものではないですし、どれを選択しても多少の誤差しかないように思われますが、実はその中に、今後に大きな影響を与えるダイヤモンドの原石のような「意思決定」もあるのではないかという仮説を持ち、事に当たっていきたいと思います。