「動物的ニオイ」とは

ソフトバンク孫正義氏が中国のベンチャー企業20社程度に会ったのは2000年のことです。1社あたり10分程度のミーティングを行ったそうですが、その中に即断即決で20億円出資することを決断した企業がありました。それが現在のアリババグループであり、企業家のジャック・マー氏でした。


2000年当時、アリババグループはまだ売上のない草創期の企業だったわけですが、その当時からジャック・マー氏は他の企業家とは違う何かがあったそうです。それは「動物的ニオイ」が違うということですが、どうすればそのようなニオイを嗅ぎ分けることができるのでしょうか。


少なくともはっきりしていることは、今の私にはそうした能力を持ち合わせていないということです。人のことがよくわからないし、なかなか理解できない。そのことは、謙虚に反省していかなければなりません。


ただ、おそらく孫正義氏も、人のすべてを見分ける能力があるわけではないと思います。「同志的結合」という言葉をよく使われますが、「同志」であるかどうか、「同志」と呼ぶにふさわしい人物であるかどうかという一点において、優れた嗅覚を持っているということではないでしょうか。


今から10年ほど前、ある上場企業の社長にお会いさせていただいたとき、その人に指摘されたことがあります。


「私たちは、最初に会ったそのときに、その人をランク分けしている。君はCランクだ。Cランクと判断した人とは、もう二度と会うことはない」


そのことを言われた直後は、感情的に反発したくなる気持ちがなかったかと言えば嘘になりますが、今から振り返ると、正面切って話していただいたことにとても感謝しています。


その人から見れば、私自身の評価は「Cランク」だったかもしれませんが、「Cランク」だからと言って私自身の人生が終了してしまうわけではありません。「Cランク」と評価されても、私は私自身のその後の人生を、精一杯歩んでいく必要があります。


大切なことは、どのような目的で仕事に取り組むか、どのようなビジョンや哲学を持って目の前の仕事に打ち込んでいくかということではないかと思います。私自身の評価は低いものであっても、私自身が私自身の時間を活用してできることは、思いを強くし、実践を積み重ねていくことの一点です。


正直なところ、いろいろと迷うことは多々ありますが、自分自身の「思い」を常に顧みて、実践を積み重ねていきたいと思います。