「小説」を形式知化すると…

人工知能の父」と呼ばれるマービン・ミンスキー氏は、あるインタビューで、SFを除くたいていの小説を読まない理由として、以下のように語っています。


「たいていの小説は、まず人々の問題があり、彼らが陥った難しい状況というものがあって、それをどうやって解決するか、うまく解決できてハッピーエンドになるか、そうでなければ、うまくいかなくて罰を受けたり死んだりするか。百冊小説を読んだら、みな同じなんですね。…人気小説と言われるものを読むと、いつも古いアイデアに新しい名前の人々を入れ替えただけですから。」


小説に携わる方々からすると、「それを言っちゃあ…」と思われる発言かと思いますが、個人的には、示唆に富んで、いろいろな意味で非常に面白い意見だと思います。


私自身がそう思うのは、「小説」を「人生」という言葉に置き換えてみると、同じようなことが言えることに気づくからです。


「まずは人々が何らかの環境で生まれ、育つに従って難しい状況というものが生まれ、それをどうやって乗り越えていくか、あるいは回避していくか。成人となって結婚するかしないか。子供を産み育てるか、子供はいないか。やがて老いを迎え、何らかの状況で死んでいく。人生と言われるものは、いつも古いストーリーに新しい名前の人々を入れ替えただけですから。」


誰でも必ず生まれ、必ず死んでいくという物語としての骨格は、「人生」においては、第三者から見ればそれほど大差ないのかもしれない。


だからこそ、自分自身が真剣になれる物語、我を忘れて紡ぎ出していける物語は何かを、見出し、打ち込んでいくことが、「人生」における非常に重要なテーマであると考えさせられます。