群戦略と情報革命との親和性

昨日、ソフトバンクグループ・孫社長による決算説明会がありました。インターネット環境で視聴することができましたが、今回もいろいろなことを考えさせられました。


今回のプレゼンテーションで最も印象に残ったことと言えば、「群戦略と情報革命との親和性」についてです。ソフトバンクグループは「300年成長し続ける企業群」を目指しているそうですが、私自身、この「300年」という数字に今まであまり注目してきませんでした。「どんなに優れた企業も、30年経過すれば頭打ちになる。ならば、その10倍は継続する企業群を目指そう」という程度のことかなと思っていました。しかし、どうやらこの「300年」という数字にも、深い意味がありそうだと考えさせられました。


なぜ、「300年」という数字が出てくるのか。それは、「情報革命」の動きと深い関わりがあるからではないかと思います。例えば現在、日本を代表する企業として挙げられるのはトヨタ自動車でしょう。昨日、トヨタ自動車も決算説明会がありましたが、豊田社長は将来に対する強い危機感を持っているということでした。それは、なぜか。トヨタ自動車という優れた企業さえも、危機感を持たざるを得ないのはなぜか。私個人の意見としては、それはトヨタ自動車の基盤としているものが「産業革命」にあるからではないかと思います。


学術的に「産業革命」とは、17世紀から18世紀にかけて起こった革命とされているようが、その影響力は強く、今も影響し続けているという見方もできるのではないかと思います。そして、孫社長からすれば、「産業革命よりもインパクトの強い情報革命は、少なくとも今後300年以上は世界に影響し続けるであろうから、情報革命の影響が続く300年は成長する企業群を目指そう」という発想が生まれ、それで「300年」という数字が出てきたのではないかと思いました。


豊田社長の「ネット接続サービスを強化した新車の投入」「未来のモビリティ社会をつくる」という発言は、まさに「産業革命」に立脚した企業基盤の中に、「情報革命」に立脚した企業基盤を植え付けていこうとする決意と捉えることができるのではないかと思います。


それでは、ソフトバンクグループが最初から「情報革命」に立脚した企業であるとするなら、なぜ「群戦略」を採用することになったのでしょうか。それは、この企業形態こそが、「情報革命」との親和性が最も高いと判断したからではないかと思います。情報革命の根幹である「インターネットの世界」は、「中心のない世界」と言われています。言葉を変えれば、インターネットの世界では時間や空間の制限を打ち破り、壁のない世界、誰もが自由に往来できる世界を維持しようとする自律的な力が働く世界であると言えるでしょう。もちろん、違法なコンテンツ等は取り締まっていく必要がありますが、本質的な根幹は、そのような世界にあると思います。


そのため、「情報革命」が起こってから、変化のスピードが飛躍的に高まりました。商品サイクルは「ペンシル型」とも呼ばれ、よい商品は一気に広まりますが、その分、ピークアウトするスピードも恐ろしいほど早まっているようです。


そのような「情報革命」真っ只中の世界において、一つの事業、一つの商品やサービスにすべてをつぎ込むのは確かにリスクが高すぎると言えるのかもしれません。だからこそ、「群戦略」が有効な企業形態として、それを生み出したのではないかと思います。各企業が自律的に活動しながら、企業理念によって緩やかに結合され、その企業群の構成自体も変化し続けていくのでしょう。


「未来を予測する最良の方法は、自らそれを生み出すこと」という名言がありますが、今後どのような未来が生み出されていくのかに注目しつつ、私自身も小さな小さな参加者の一人でありたいと願っています。