日本昔話と警備員の旗

以前テレビで見た日本昔話で印象に残っているお話があります。

ある日、汚れた服を着た僧侶が「一晩泊めてくれないか?」とやってきました。粗末な家ではあったのですが、困っている僧侶を一晩泊めてあげた老夫婦は、布団が二つしかないため、一つの布団で二人、一晩を明かしました。食べ物もそれほど多く残っていませんでしたので、僧侶に晩飯を食べてもらい、自分たちはほとんど何も食べずに一晩を明かしました。

老夫婦の対応に感動した僧侶は、こう言います。

「何でもいいから、たった一つ願いを叶えてほしいとしたら、どんなことかのう?」

老夫婦は次のように答えます。

「別に叶えてほしい願いはないが… 強いて言うなら、昔のように働ける健康な身体がほしいかのう」

僧侶が去っていく間際、僧侶から指示されたように、老夫婦はお互いがお互いの身体に少しずつお湯をかけると、二人は本当に身体が若返っていきました。

そうして老夫婦は壮健な夫婦に戻り、朝から晩まで、田んぼや畑で働き続けたというお話です。


最近、別のテレビ番組では、警備員の仕事をしている80代の男性が、会社から指示されたわけでもないのに、仕事が終わると、警備用の赤色と白色の旗を自宅へ持ち帰り、自分で両方の旗を毎日洗濯しているというお話がありました。


「人生百年時代」と言いますが、健康体であるなら、これからの時代はより長く働かなければならない時代を迎えています。そのとき、「働かざるを得ない」と思うのか、「働かさせていただける」と思うのかで、人生の後半戦の見え方が大きく異なってくるのではないでしょうか。


90歳の職人を採用している会社では、その人限定のルールとして、雨の日と雪の日は休んでいただくよう指示しているそうです。「ダイバーシティの時代」と言いますが、一人ひとりにあったルールを見出していく工夫が、雇用する側にも求められているということなのでしょう。