秘密

最近、谷崎潤一郎の「秘密」という小説を読んだのですが、非常に面白く、短編ということもあって一気に読み終えました。特に中高年世代に響く内容になっているのではないかと思います。

 

主人公が女装することや、最後に主人公が「血だらけな歓楽」を求める気持ちを理解することはできませんが、文章自体が綺麗で、趣のある日本語だと思いました。

 

雑然とした街中にこそひっそりと身を隠すのに最適な場所を見つけるというところ、長く東京に住んでいながら通ったことのない道のほうが(はるかに)多いことを認識するところ、普段何気なく通っている道でも一本奥に入ってみると全く知らない世界が存在することを認識するところ、などが特に共感しました。

 

そして、あることを知ってしまったために興醒めしてしまうこともあることを理解できます。劇的な変化を望むわけではなく、ちょっとした工夫に喜びを見出し、何かをきっかけに興醒めしつつも、またちょっとした工夫を通して喜びを見出していこうとする気持ちに共感しました。