超一流への憧れ

昨年のラグビーワールドカップ日本大会は大いに盛り上がりましたが、それ以降、スポーツを見ていてあまり興奮することがありません。あのときの印象があまりにも強烈すぎて、自分自身の気持ちの中でハードルが高くなってしまったのかもしれませんが、あのときのラグビー日本代表チームのように「これぞ超一流」というプレーを見たいという欲望がどこかにあるからかもしれません。

 

過去に超一流のプレーを見てしまうと、自分自身の目線がどうしてもそれに合わせて高くなっていきます。私が小さい頃の「超一流」と言えばやっぱり王貞治選手でした。王さんのホームランをテレビで見るだけでスカッとした気分になりました。王さんが引退したとき、私はまだ小学生でしたが、本当にガッカリして「もうプロ野球は見たくない!」とずっと拗ねていました。

 

ジャンルは違いますが、小さい頃のテレビの中の「超一流」と言えば志村けんさんでした。今年お亡くなりになったときには、初めて有名人が亡くなったことで涙を流しました。知人ではないのに、涙が出ることがあるということを経験しました。

 

最近の野球界の「超一流」と言えば、やっぱりイチロー選手でしょう。私たち世代はイチロー選手がプロ野球にデビューしてからずっと現役時代を追いかけてきていたので、どうしても「イチローのようなプレー、イチローのような記録」を期待してしまいます。イチロー選手の記録を追い抜くことは不可能に近いと重々承知しているのですが、やっぱり新たな「超一流」が出てくることをどうしても期待してしまいます。

 

最近、藤井聡太二冠がずっと話題になっているのも、私たちの「超一流」に対する憧れが強いからではないでしょうか。将棋界ではずっと羽生善治九段が「超一流」の座に君臨してきましたが、最近無冠になりました。しかしながら、今回竜王戦の挑戦権を獲得し、豊島将之竜王と100期タイトル獲得をかけた七番勝負は、藤井二冠の対局と同様に大いに盛り上がるのではないでしょうか。

 

王さんやイチロー選手を知っている私たち世代は、どうしても目線が高くなってしまっているのかもしれません。現在のプロ野球界にもすごい選手はたくさんいると思いますし、大谷翔平選手や大阪なおみ選手は「超一流」と呼ぶべき選手なのかもしれません。でも、やっぱり「試合に出続けて、結果を残し続けてこそ、超一流」というイメージをどうしても色濃く持ってしまっています。

 

藤井聡太二冠は「将棋が好きで仕方ない」ということが画面から伝わってきて、私が期待する「超一流像」に合っているから大ファンになっているのかもしれません。確かに「超一流像」は人それぞれなのかもしれませんが、誰が見ても唸らされ、誰が見ても感動させられる「超一流」の出現を期待したいと思います。