天才の師匠の言葉

藤井聡太五冠が13手詰の手筋を見逃し、負けてしまった一局がありました。やっぱり藤井五冠も人間なんだなと思った瞬間だったのですが、その後の師匠である杉本八段のコメントが秀逸でした。

「拾い勝ちは、彼には相応しくない。」

実はこの一局、AIによる形勢判断では99%藤井五冠の負けでした。一分将棋に入り、渡辺棋王に一瞬のミスが生じたため、たまたま転がり込んできた14手詰でした。

杉本八段は、その13手詰を見逃したことを非難するのではなく、そもそも99%負けの形勢だったことにこそ注目していたのだと思います。今、将棋に対して誰も注文をつけることができない状況にある藤井五冠に対して、あえて反省すべき点を一言で的確に表現されているのは素晴らしいと思います。

以前藤井五冠がもっと若い頃、「将棋は神様にお願いするものではない」とお話されていました。つまり、神頼みするものではなく、自分自身がどれだけ向き合えるかどうかのものだということでした。

今回のエピソードを俯瞰し、藤井五冠は本当に師匠に恵まれているし、きっと将棋をする環境にも恵まれているのだろうなと思いました。藤井五冠の努力だけで、今の環境を獲得することができたかどうか。やっぱり藤井五冠は、将棋の神様に愛されているのだろうなという気がします。