「頭」か「心」か

新しい商品やサービスを提供するときなど、企画を立て、いろいろな調査を行い、そうして戦略や戦術を実行しようとします。それはまさに「頭」を使う仕事だと思うのですが、「頭」だけで考え出した商品やサービスでは、お客様の「感動」が得られにくくなり、なかなか大ヒットにはつながりにくいという経営者もいらっしゃるようです。つまり、「心」を使って商品やサービスを絞り出す必要があるということでしょうか。


このように、ふだん何気なく「頭」と「心」を私たちは使い分けていますが、そもそも「頭」と「心」の違いとは、どういったところにあるのでしょうか。


「頭」は、簡単に言えば、「頭脳」つまり「脳」のことを指すことが多いように思います。「脳」の中でも、特に「左脳」を指すことが多く、つまりは「論理的思考」を表しているように思います。一方、「心」は、自分自身のコントロール下を超越した「感情」や「感性」を指すことが多いように思います。つまりは、「右脳」を指すことが多く、「感情的思考」や「感性的思考」と言えるでしょうか。


私たちは、左脳と右脳を自分自身のコントロール下(顕在意識)で使い分けることができないように、「頭」と「心」も複雑に絡み合い、そんなに簡単には割り切れるものではないように思います。最近の日本におけるビジネス界の論調は、どちらかというと「頭」を重視する傾向が強すぎたように感じましたが、昨年東日本大震災が発生したこともあり、やっぱり「心」こそが大切なものではないかと、ビジネス界でも振り子が逆に振り戻されてきているように感じます。


私の個人的な考えからすると、自分の中でコントロールできる「頭」よりも、自分の中にありながら、自分でコントロールできない「心」のほうが、はるかにやっかいで、はるかに意義のあるものではないかと思います。例えて言えば、「心」は「混沌」を表し、「頭」は「秩序」を表しているように思います。「秩序」というものは、それよりもはるかに広大な「混沌」の中からしか発生してこない存在であるように感じます。つまり、「心」のほうがはるかに大きな存在であり、その大きな存在の中から、優れた「秩序」を形成しているものが「頭」であるように思います。


しかしながら、「陰極まれば陽、陽極まれば陰」という言葉があるように、やはり単純に「割り切れる」ものでないことだけは確かなようです。「心」を尊重しつつ、「陰極まれば陽」の精神で、徹底的に「頭」も使っていこうとする状態が、仕事をしていく上で理想的なのでしょうか。