将棋の羽生二冠が、国民栄誉賞を授与されることになりました。将棋ファンとして、非常に嬉しく、幸先の良い一年のスタートになりました。
羽生二冠に関しては、ご本人のコメントももちろん素晴らしいですが、羽生二冠を取り巻くライバルの方々のコメントも素晴らしいものがあります。例えば、谷川九段。「高速の寄せ」と言われ、終盤には絶対的な自信があったにも関わらず、羽生さんには終盤で逆転負けを喫することがしばしばあったそうです。
その谷川さんが、「羽生さんに嫉妬していた」と仰っていたコメントが印象的です。自分の嫉妬心から逃げずに、羽生さんを通して、自らの心と正面から向き合っていたということなのでしょう。
森内永世名人は、羽生さんと同い年で、ＮＨＫの小学生将棋大会からすでにライバルだったそうです。その森内さんが、「二度、大きなミスをしない」と仰っていたコメントが印象的です。
焦って失敗しても、「一つの失敗なら、挽回できる」と自分自身に言い聞かすことができれば、そこからさらに前向きに、目の前の対局に取り組んでいくことができます。天才棋士でありながら、負けることで体得されたものの重みを感じます。
お二方をはじめ、将棋の世界では、相手を称える精神が根付いていると思います。負かされたとき、どんなに年下の棋士であっても、格下の棋士であっても、「負けました」と頭を下げます。実際、中学生棋士の藤井聡太四段に対して、どの棋士も「藤井さん」と仰います。その距離感、その緊張感が、私はとても気に入っています。
