敵をつくらない

ある大物政治家が、側近の人に対して、次のようなことを言ったそうです。

「政治家にとって、一番大切なことは何だと思う?それは、味方をつくることじゃない。その逆で、敵をつくらないということなんだ」


「敵をつくらない」ということをもう少し具体的に言うとするなら、「不要な敵をつくらない」ということなのかもしれません。何か事を成そうとするなら、特定の敵を設定して戦う場面があるかもしれませんし、「敵であること」を名乗り出てくる人が現れるかもしれません。

では、「不要な敵」とは、どのような人なのでしょうか。それは、例えば、家族や友人などが挙げられると思います。本来、大切な「身内の人」であるにもかかわらず、ちょっとしたすれ違いなどによって、深い傷を負ったり負わされたりして、いつの間にか「最大の敵」になってしまっていることがあると思います。

また、そういった「身内の人」だけでなく、私たちは常に「身近な人」によって傷つけられ、傷つけているのではないかと思います。そのために、過剰な防衛本能が働き、自分のまわりに大きな壁をつくって、知らず知らず「小さな世界」の住人に留まっていることに気づかされます。


「味方をつくる」ことがなぜダメかというと、常に「自分に向けられる感情や行為」に振り回されてしまうからだそうです。「アイツはオレがこんなによくしてやったのに、自分に対して何も返してくれない」といった愚痴をこぼすようになり、いつの間にか「味方候補」が「最大の敵」になっていくことに問題があるようです。

「不要な敵をつくらない」というスタンスで生きていくとするならば、自然とまわりの人に対して、自分自身に向けられる過剰な期待を持たなくて済むようになります。そして、やがては「自ら頭を下げる」気持ちにも結びつけていくことができるのではないでしょうか。


「小さな世界」の住人としてだけでなく、「大きな世界」を跳ね回る自分自身も持ち合わせていくために、自分に向けられる過剰な期待は持たず、自然体で、謙虚な気持ちで、まわりの人と接していきたいと思います。