注目の一戦

先日、高校野球で注目の一戦が行われました。

米子松蔭対境高校。全国的にはそれほど注目される試合ではなかったかと思いますが、米子松蔭の関係者に新型コロナウイルスの陽性者が出たことでやむなく出場辞退に追いやられ、一気に注目されるニュースとなりました。

米子松蔭野球部のキャプテンが批判覚悟でツイートしたものが多くの人に伝わり、事態が動き始めました。

野球部員に一人の陽性者もなく、濃厚接触者も一人もいないのに出場辞退はいくらなんでもおかしい、ということで、境高校の不戦勝が取り下げられ、改めて試合を行うことが決定しました。

 

このニュースを確認すればするほど、境高校野球部員の素晴らしさが浮き彫りになっていきました。米子松蔭が辞退した理由を知り、「自分たちも同じ状況に追い込まれることがあるのだな」と共感し、不戦勝が決まっていたにも関わらず米子松蔭キャプテンのツイート拡散に協力していたということですから、本当に頭が下がります。

多くの人が発言されているように、境高校野球部員は勝利以上の財産を得ることができたのではないでしょうか。

 

では、その「財産」とは何でしょうか。これを説明するのは非常に難しいですが、その一つとして「真剣勝負の醍醐味」を挙げたいと思います。長く生きていると、惰性でやり繰りしていることが多くなってきます。それなりに真面目に生きているつもりでいても、果たして「私は今、真剣勝負をしている!」と実感することがどれだけあるでしょうか。

残念ながら、真剣勝負のヒリヒリする瞬間を味わうことはあまりありません。気づいたときには易きに流され、時間だけが過ぎてしまっていることが往々にしてあります。

でも、たまに真剣勝負に挑んでいるときは、そのあとの気持ちは非常に充実しています。おそらくいまの境高校野球部員の皆さんも、きっとそうなのではないでしょうか。

もちろん、本来であれば境高校野球部員には不戦勝後の真剣勝負が待っていたはずですが、要領よく生きているとずる賢さが身にしみて知らず知らず真剣勝負を回避し続け、いつの間にか易きに流される生き方がこびりついてしまう危険性があるように感じます。ただ、仮に境高校が再試合を拒否しても、そのことがずる賢いというわけでもないでしょうから、説明は非常に難しいところではありますが…。

 

真剣勝負には心と身体に大きな負荷がかかります。それでもなお、ここぞというときの真剣勝負に立ち向かうことができる人は、きっと人生が充実していくと信じたいです。最後は自分自身の反省になってしまいましたが、境高校と米子松蔭の野球部員に心からエールを送りたいと思います。