ダンプ・ドライバー

もう30年ほど前、私が小学5年生くらいのときでした。地元の山道を友だち二人で歩いていると、通り過ぎていったダンプカーが急停車し、私たちのところまでバックしてきました。

ドライバーが窓を開けると、かなりドスの利いた顔がこちらを睨んできます。私はすぐにでも逃げ出したい心境でした。にもかかわらず、そのドライバーは、私たちに声をかけてきました。

「おい、坊主ら乗ってくか?」

もちろん私は、何とかうまく断る理由を、小学生なりに必死で考えました。でも、友だちは乗り気だったようで、「ありがとう」と言ってしまったのです。

結局、広いダンプカーの助手席に、二人並んで乗せてもらいました。さっきまでタバコを吸っていたのか、ダンプカーの中はタバコの煙が充満しています。コワモテのドライバーは、吸殻の溢れた灰皿をそっと隠していました。


彼は私たちのような田舎の小学生に興味があったのか、いろいろと話しかけてきました。そして、今でも記憶に残っていることを説教し始めました。

「坊主らなあ、勉強だけはちゃんとせんとあかんぞ。オレはなあ、勉強せんかったから、こんなええ歳しても、アホ丸出しなんや」


それから30年くらいが経過しますが、私自身、いろいろな勉強不足が祟っていることを実感します。「あのとき、もっと勉強していれば・・・」と思うことがよくあります。いろいろな授業をサボってしまい、そのために結局単位を取得することができず、何度も何度も留年する夢をよく見ます。

また、仕事においても、自分の弱さばかりが目立ってしまい、後悔してばかりのような気がします。


今では、あの日のあのドライバーの年齢よりも、現在の私の年齢のほうがはるかに上になってしまいました。だから、これを機会に、彼に言っておきたい。

直接言うのは怖いので、この場をお借りして、あの日のドライバーに言いたい。そして、今の自分自身にもはっきりと言っておきたい。




「きっと今からでも、間に合うことがたくさんある」