群戦略

昨日、ソフトバンクグループの決算説明会をスマホで見ていました。孫社長のお話は面白く、聞いているだけで楽しくなってくるのが優れたところだと思います。


今回の説明会で孫社長が強調されていたことは、「群戦略」でした。確かにソフトバンクグループ以外で、「群戦略」を実現した企業群は他にないように思います。まさに、孫社長が「発明」した企業組織と言えるのでしょう。この説明会を聞いたあとで、私自身も楽しくなって、いろいろなことを考えました。


「群戦略」の問題点は、魅力的な起業家がいなくなった後だと思います。「ナンバーワン」の企業が、なぜソフトバンクグループから20〜30%程度の出資を受け入れるのか。それは、孫社長の個人的な魅力に負う部分が非常に大きいと思います。例えば、「群戦略」による企業組織とは異なりますが、バークシャーハサウェイは、まさにウォーレン・バフェット氏の能力に追う部分がほとんどではないかと思います。


「集中戦略」と「群戦略」を対比して、「群戦略」の優位性を確認しました。また、「財閥」と「群戦略」を対比して、「群戦略」の優位性を確認しました。それでは、「アフター・孫」の時代、末永くその優位性を築いていくためには、「群戦略」のどの部分に磨きをかけていかなければならないのでしょうか。


「集中戦略」に磨きをかけてナンバーワンになった企業が、あるいはユニコーンになった企業が、ソフトバンクグループの出資を受け入れるメリットとは何か。そこには、ファイナンス以外の「何か」が、非常に魅力的であり続ける必要があります。


例えば、グループ内の他の優れた経営者と意見交換できる場があったり、グループ内の他の優れた企業の商品やサービスと連携しやすくなったりすることも、「何か」の魅力の一つでしょう。でも、最も大切な肝となる部分は、「群戦略」を構える企業が、どのような哲学を持ち、どのような未来を思い描いているのか、そのビジョンをより明確にしていくことにあるのではないかと思います。


ソフトバンクグループの「群戦略」を、他の優れた経営者も当然ながら注目していることでしょう。「ソフトバンクグループがあんなにうまくいくのなら、私も『群戦略』を実行してみよう」と思う経営者が出てくるかもしれません。仮に近い将来、「群戦略」同士の競争が始まった場合、優位性を保つための肝の部分は何になるのでしょうか。もちろん、「先行優位性」はしばらく続くと思いますが、その寿命はそれほど長くないのではないでしょうか。


肝となる部分は、「群戦略」を構える企業としての魅力であり、その魅力とは、どのような未来を描いているのかを提示し続けることにあるのではないかと思います。例えば、ソフトバンクグループの経営理念は「情報革命で、人々を幸せに」ですが、「情報革命で」の部分は、「集中戦略」を採用している個々の企業が提示していくことでしょう。問題は、「人々を幸せに」の部分です。それは、ソフトバンクグループ自らが、具体的に提示していく必要があるでしょう。


ソフトバンクグループは、「人々を幸せに」という部分において、どのような未来を思い描いているのか。その具体的な未来像が、共感し続けることができるかどうかによって、「群戦略」の優位性が保たれるかどうかが決まってくるのではないかと思いました。