「経営学」という「補助線」

ジャック・ウェルチ氏の本の中には、ズケズケと「物申す」箇所があり、それが一経営者の偽らざる言葉であるような気がして、興味を持ってしまいます。特に「戦略」に関する記述がおもしろかったです。
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・・・戦略の大家たちは、正しい戦略を作るためには、根気強く、理屈どおりに数字をいじったり、データをひねり回したりすることが必要だと言うかもしれないが、そんなこと、やめてしまえ。
・・・戦略は、生き物だ。呼吸をする、ダイナミックなゲームなのだ。
・・・現実の世界では、戦略は非常に単純なものだ。大まかな方向性だけ決めて、死に物狂いで実践するに限る。
・・・勝ちたいのなら、戦略についてじっくり考えるより、その分、体を動かせ。
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私自身、注意しておきたいことは、上記のような記述があるからといって、決してジャック・ウェルチ氏が「経営学」を軽視しているわけではないということです。(当たり前ですが)彼は「経営学」をあまり勉強していないわけではなく、それどころか人一倍勉強し、自分自身の経営に役立つような解釈を行おうとし続けた結果、「物申す」言葉になっているような気がします。


それは、(私自身、大学院で教えていただいたことですが)「経営学」を経営の「補助線」として捉える考え方に近いのかもしれません。「経営学」という学問で語られるフレームワークは、それを構築したり普及したりすることを生業とする教授やコンサルタントからすれば、まさに「主力商品」なのかもしれませんが、実際に経営を行う側からすれば、経営の「補助線」とみなすことが、最も「腑に落ちる」捉え方なのかもしれません。

つまり、難解な割には効果の乏しい(と考えられる)「補助線」であれば、使わないほうがいいでしょうし、多少難解であっても、それが自分自身の経営に役立つ「補助線」であれば、しっかり勉強して活用しやすいようにアレンジする価値があると考えられます。


ジャック・ウェルチ氏が「経営学」を「補助線」として有効活用している事実は、「シックス・シグマ」に関する記述から読み取れます。
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・・・シックス・シグマは、平均ではなくバラツキのことであり、それを顧客とあなたとの間から取り除くことなのだ。
・・・「バラツキは悪だ」という箴言を理解すれば、六割はシックス・シグマの専門家になったと思ってよい。残りの四割は、シックス・シグマを使ってバラツキという悪を取り除く実践にある。
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